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〈社長対談②〉株式会社PDS 代表取締役 渋谷 一敬様

(安岡)

本日は、第二回目ということで、株式会社ピーディーエス代表取締役渋谷一敬様に対談させて頂きたいと思います。よろしくお願い致します。

渋谷様は、東京慈恵会医科大学付属第三病院の診療放射線技師として働いた後に、現在の株式会社ピーディーエスを起業されたとお聞きしています。

非常に珍しいキャリアかと思いますが、現在の会社を起業された経緯について、教えて頂けますか?



(渋谷様)

ありがとうございます。私は約12年間、大学病院の診療放射線技師として、高次医療機関における画像診断領域に携わってきました。CT、MRI、超音波(エコー)などの各種検査業務にあたる中、病気が見つかった時点で余命僅かであろう症例を数多く経験し、一次医療における早期発見に対する新たなアプローチが必要と痛感いたしました。

そこで、超音波検査のスペシャリストの育成と、クリニックの超音波検査のサポートによる疾患の早期発見を目指し、2013年、株式会社ピーディーエスを設立しました。 (安岡)

素晴らしい取り組みですね。クリニックで早期発見できれば、救える命も多々ありますし、突き詰めると、高次医療機関との役割分担や地域連携の礎にもなりそうですね。

実際のお仕事の内容を教えて頂けますか? (渋谷様)

はい。本日はスライドをお持ちしたのでそれに合わせてお話できればと思います。



(渋谷様)

今回お持ちしたのは超音波機器メーカーのハンズオン講習会のランチョンセミナーやコンサルタント様に超音波検査の受託業務・支援サービスの必要性をお伝えする際の資料となりますが、臨床実績とクリニックの増収効果をお伝えするものになります。



(渋谷様)

社名のPDSですが、患者様、医師に満足を提供したいとのコンセプトから、Patient、Doctor、Satisfactionの頭文字となっています。



(渋谷様)

弊社のブランディングに使っているイラストですが、一次医療で超音波検査をしっかり行うことで、病気をより見える化することができます。病気を数値や心電図の波形で表すよりも、患者様の満足・理解に繋げて行きたいという活動を示したものになります。



(渋谷様)

現在のサービス対象範囲ですが、主に1都3県、一部、東北地方で活動させて頂いております。現在のご契約医療機関は約120施設の医療機関となります。



(渋谷様)

2013年から正式に会社をスタートして、去年(2020年)の10月時点では、契約施設が約120施設、月間約3,800件の超音波検査を行えるようになりました。


(安岡)

すごい順調に業績を伸ばしていますね。



(渋谷様)

ありがとうございます。ただ、2020年はコロナの影響で4、5月は3割ほど減少しましたが、6月には件数も元に戻ってきました。更に、9、10月では、過去最高の検査数を更新しております。クリニックの増収増患にもお役に立てたのではと考えています。


(安岡)

9月10月にそこまで回復するのは、凄い事ですね。何か理由はあると思われますか?


(渋谷様)

例えば、基礎疾患のある方がコロナに感染すると、健康な方と比べ悪化が著しいとの情報などもあり、ご自身の健康に対して今まで以上に興味を持ち、真剣に医療に向き合う様になった結果なのかなとも思っています。


(安岡)

確かに、コロナ関連の病気については様々に検索されていますし、自分の体の状態や家族の体の状態に照らし合わせて調べているのは容易に想像がつきますね。


(渋谷様)

はい、それともう一つコロナ禍において健康意識が高まっている中、情勢を踏まえ内視鏡などの検査控えが多くのクリニックで散見されましたが、超音波検査は比較的影響を受けにくいため、医師側も案内しやすいなども影響しているのかとも考えています。




(渋谷様)

超音波検査は、身体に及ぼす物理的負荷や影響も少なく、画像で患者様に示せるのが特徴です。病気の見える化により、患者さんには理解が深まりますので、今回の感染状況下では、非常にお役に立てたのではないかなと思います。



(渋谷様)

私どもがカバーしている検査種別ですが、ご覧の通り全身を網羅しています。頭部側から順に、頸動脈、甲状腺、乳腺、心臓、あとは、腹部エコー、下肢血管や表在エコーです。


(安岡)

かなり網羅されていますね。どのような診療科でこのサービスをご提供されているのですか?


(渋谷様)

弊社でご利用されている診療科は、多くは内科ですね。


(安岡)

え、内科ですか?婦人科領域の検査も内科でやられるという事ですか?


(渋谷様)

はい。内科です。乳腺の検査も内科で行うこともあります。例えば消化器内科で腹部エコーしか行っていないクリニックでも、頸動脈の検査も必要なシーンもあります。更に、心臓も行えたら、更に患者様に安心をご提供することが出来ます。

私たちは、クリニックの状況に合わせてコンサルテーションも行いながら、限定された部位の検査を増やすだけではなく、今まで、手を付けていなかった領域まで掘り起こすというサポートを行っています。


(安岡)

なるほど。医療は縦割りな事が多いですが、超音波検査を用いてその壁を壊している感じがしますね。


(渋谷様)

はい、クリニックにおいても診療科に分かれた専門領域となっていますので、全身を診る事のできる超音波検査を全て活用できているという訳ではありません。

現在、120施設の実績を提示して、エコーの適応からコンサルティングしているところです。例えば尿潜血は、ほとんどは原因が不明で確定しないのが一般的ですが、原因が見つからない中の尿潜血と安心していたら、超音波検査を行ってみると実は、膀胱癌や、腎臓癌が見つかったという事例も多くあります。他施設での実例をお話しすると有用性を感じて頂けるため、明日からの診療パターンの一例として組み込んで頂けるのが現状です。



(渋谷様)

クリニックの経営的側面からのお話が出来ればと思います。超音波検査の保険点数に関しては、部位や状況にもよりますが、概ね500点程度。心エコーに関しては880点となります。検査における収益としては比較的高い領域になるかと思います。



(渋谷様)

エコーの検査を誰が行うのかというと、まず、第一に、医師は誰でも行えます。ライセンス上、医師の指示のもと、臨床検査技師、診療放射線技師、看護師も行えます。


(安岡)

看護師もOKなんですか!?


(渋谷様)

はい。医師以外に3つの職種のメディカルスタッフが検査を行えるという実情は、あまり知られていません。ですので、診療放射線技師さんは行えるの?と、なってしまいます。


(安岡)

私も、臨床検査技師と、診療放射線技師って、曖昧になることが多いです。


(渋谷様)

そうですよね。診療放射線技師は、医師の指示の下、人体に対して放射線を照射できるという資格で、業務の一例を挙げると、レントゲンやCTですね。MRIもCTと同じように輪切りの画像ですが、MRIは放射線を使用していないので、実は、診療放射線技師である必要がなく、臨床検査技師が担当している施設もございます。

逆に、超音波検査は放射線を使用しているわけではないのですが、診療放射線技師が担当している施設もあり、施設によって様々です。


(安岡)

その辺の領域って、分かっているようでわかっていない気がします。


(渋谷様)

そうですよね。超音波検査は技術的に簡単なものと思われがちですが、臨床的、技術的、幅広い様々な知識が必要になります。その実情と、経営の運営上で乖離があるので、雇用の問題も発生しやすい状況です。



(渋谷様)

あまり知られていませんが、日本においては、先程の3ラインセンスのいずれかを有せば、技術の優劣にかかわらず、医療行為としての超音波検査は行えてしまうので、検査のクオリティを担保するために認定超音波検査士というものがあります。消化器、循環器、体表臓器、健診、泌尿器、血管、産婦人科の7領域、専門医制度のようなものですね。


(安岡)

恥ずかしながら、認定超音波検査士とは初めて知りました。専門の技術の担保がされているのであれば、医療機関の差別化にもなりますね。



(渋谷様)

そうですね。私は消化器、体表臓器、産婦人科領域の3つの認定資格を持っていますが、超音波検査士にとって、認定超音波検査士の試験がモチベーションの一つとなっており、弊社スタッフは積極的にトライしています。



(渋谷様)

現在では、大病院の全てが分業制になっているので、エコーを行うなら、エコー室に検査依頼、MRIを行うなら、MRI室に検査依頼という形になっています。以前よりも、ご自身の専門領域以外で、ドクターが学ぶ環境が減ってきていますので、大病院ではご専門以外の超音波検査を行う事は環境的にほぼ無いような状況です。


(安岡)

なるほど。大学に近ければ近いほど研修、分業は当たり前と、そういう可能性が高くなってるってことですよね。



(渋谷様)

一次医療施設は、高次医療施設の職務を経験された先生たちがご開業され、クリニックや診療所を行っているのが現状です。ご自身の専門領域であれば、技術習得や新ガイドラインへの対応の時間が取れるかと思いますが、専門領域外のエコーに関しては、厳しい部分もあります。



(渋谷様)

私どもの特徴の三つとして、1つ目は、病気や検査への理解の推進です。患者さんたちには、検査を行う上で、しっかり検査の説明をしていきます。2つ目は診療ガイドラインに沿って、予約管理で定期来院の実現を行っていきます。3つ目は、雇用リスクの回避となります。一次医療機関においては、常勤の検査技師を雇ったとしても、フル稼働できる業務量がないので、私どもが必要なときに、必要な分だけお伺いして、そこで効率的に検査をしていくという流れになっています。



(渋谷様)

腹部エコーはエコー検査においても最も代表的な検査の一つかと思います。上腹部に関しては、肝臓、胆のう、膵臓、腎臓、脾臓、腹部大動脈か、下腹部に関しては、膀胱、前立腺、あとは加えて婦人科の領域があります。

上腹部でも下腹部でもこれだけの領域があります。各領域に対して、患者様への啓発を行い、患者様の理解を得ていくという流れを作っていきます。



(渋谷様)

弊社の契約施設の腹部エコーに関する、依頼理由ランキングです。例えば、腹部エコーであれば、肝機能異常、スクリーニング、尿潜血、上腹部痛、糖尿病、健診、背部痛、下腹部痛という依頼が多い状況です。このように、他施設の現況をお示しすることにより、自院の検査オーダーの参考例にして頂き、エコーにおける適応範囲の拡大に繋げて頂いております。


(渋谷様)

こちらは腹部検査における結果ランキングです。第1位は脂肪肝。続いて、腎のう胞、肝のう胞、異常なし、胆のうポリープ、胆のう結石、腎結石。このような形で見つかってきます。その中で赤字に関しては、定期的なフォローをされている先生が多い疾患です。

経過観察をすべき疾患の管理を確実に行っていくことで、重篤な病気の進行を未然に防ぎ、更には定期来院につなげていくというところです。



(渋谷様)

こちらは、ある内科様の事例です。青がひと月ごとのエコーの検査数で、黄色は定期フォローしている患者様のエコー検査数です。全検査数に対するフォロー患者の割合が月を追うごとに増えていっています。2年で約30-40%がフォローの患者様となっており、全検査数自体も延びて、毎月安定した検査数を確保しているというデータとなっています。



【最後に】

(渋谷様)

大事なことでは、エコーの検査を行う疾患です。何を検査すべきかというのを、しっかりクリニックで定めていき、疾患ごとにフォロー期間、あとは、紹介基準の目安をしっかり定めていくということが大事で、早期発見、定期来院、収益増加につなげていけるというところになっています。


(安岡)

ありがとうございました。御社の活動が良くわかりました。とても素晴らしいですね。一次医療圏で、患者さんの早期発見・早期治療によって、患者さんにとっても高次診療圏の病院の負担軽減にもなる活動かと思います。

最後に、今後の目標を教えて頂けますか? (渋谷様)

はい。私どものビジョンは、超音波検査を通して、患者様の健康未来とメディカルスタッフの未来キャリアを創造することです。

一次医療において、今まで以上に超音波検査を活用して頂くことで早期発見に繋げ、患者様の健康未来を支えていきます。

また、超音波検査を担うメディカルスタッフに対しては、社会貢献できる環境、スキルアップできる環境、それぞれのライフシーンに適合できる職務環境を整え、互いに切磋琢磨し、医療人として成長できる会社にしたいと考えています。


(安岡)

素晴らしいですね。とてもいいお話を聞かせていただきまして、渋谷社長ありがとうございました。



渋谷社長は、超音波検査を軸として、一次医療の質の向上と臨床検査技師のキャリアについて、現実になりうる活動を行っていました。救える命を救う事、働く環境を改善すること、社会的にも非常に素晴らしいテーマかと思います。


渋谷社長の今後の動きにも注目したいと思います。




 
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