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インタビュー:プレコンセプションケアについて皆さんに伝えたいこと。~看護師から助産師へ~

医師や看護師、医療従事者の転職活動を通じて、“自分が何を大切にしていきたいのか”ご自身で理解している方は、良いご縁を引き寄せ、ご自身が望んだ通りの転職、望んだ通りのキャリアを手にしています。

 

今回は、長年想い続けた結果、自分の理想の仕事に出会えた方のインタビューです。

 

インタビュアー:人材コーディネート部 梅澤

2024.06.19

インタビュー:プレコンセプションケアについて皆さんに伝えたいこと。~看護師から助産師へ~

Q1 看護師を目指した理由を教えてください。


人のために何かをすることが自分自身の喜びになる、そんな私の性格を活かせる職業かなと考えたからです。

 

私は、中学・高校の頃によくボランティア活動をしていました。高校1年生の時に、東日本大震災があり、高校3年生になり進学するにあたり、将来どういった仕事に就こうかと考えていた時、人に関わることでその人がハッピーになれる仕事がしたいと考え、看護師という仕事を選びました。

 

看護師は、病気だけを診るのではなく、その病気を患っている患者さん全体を看る仕事だと考えています。例えば、病気になったことで、身体の変化や、家族の中での役割や、社会の中での役割が変わっていくなかで、暗い気持ちになりそうな患者さんを、お世話しながら少しでも支えてあげたい、そう思って看護師を目指しました。

 


Q2 看護師としてどのように働かれていましたか?


知り合いの医師を通じて、関西のある医療センターの存在を知り、そこで看護師として働き始めました。その医療センターは、阪神淡路大震災の被災地にあります。私は、自分が生まれた日が阪神淡路大震災の日だったため、その地域で大変な思いをしてきた人たちをケアすることが自分にとってベストな選択だと考え、その医療センターでの勤務を決めました。


その医療センターでは、2年間は手術室、その後1年間は循環器病棟で働いていました。循環器病棟では、1人の患者さんと長い付き合いになることが多く、特にやりがいを感じていました。父が、私が大学2年生の頃に狭心症で一度倒れたことがあり、そこからの学びを循環器病棟に活かせたことも大きかったです。父は倒れた後、仕事復帰できるまでに回復しましたが、好きなものを食べつつも、食生活は以前と同じはとはいかず、味を薄くするとか、食生活を少し変えて過ごしました。暮らしを変えつつも、できるだけその人らしく生きる、そんなことを父から学び、患者さんと接する時も意識していました。


インタビュー:プレコンセプションケアについて皆さんに伝えたいこと。~看護師から助産師へ~

Q3 看護師を経て助産師を目指したきっかけは?

 

助産師という仕事を初めて意識したのは、看護大学で「母性」を学んでいた時です。ジョン・ボウルビィ(英: John Bowlby、イギリス出身の医学者、精神科医、精神分析家)の「愛着形成」の理論に大変感動し、助産師という仕事にとても魅力を感じました。そこで、大学4年の時、助産師の大学を受験しましたが、希望する大学にはご縁がなく、当初予定していた看護師の道を進みました。

 

助産師を目指すことになった大きなきっかけは、私が循環器病棟で働いていた時に受け持っていたご高齢の患者さんのお話です。ある時、その患者さんのお孫さんが同じ病院内で産まれ、その患者さんは大変感激しながら、「この世に人がひとり産まれてくることによって、沢山の希望を与えることができる」と身体がしんどい時期だったのにかかわらず、私にお話ししてくれました。

私は、自分の生まれた日が阪神淡路大震災の日だったことから、多くの人が亡くなった日に生まれてきた自分について、複雑な気持ちがありました。ですが、その患者さんのお話を聞いて、自分が産まれたことも希望の光だと思うことができ、他のたくさんの新しい命も幸せに産まれてこられるようにケアがしたい、そのために助産師になろう、そう強く思うようになりました。



Q4 助産師を目指してからこれまで


看護師から助産師になる方法は、いくつかありますが、私は大学の専攻科で1年学ぶ方法を選びました。他には、助産師専門学校へ通う方法、大学院へ通う方法もあります。


インタビュー:プレコンセプションケアについて皆さんに伝えたいこと。~看護師から助産師へ~


大学を出た後、助産師としての経験を積むため、都内の病院に就職しました。ただ、日々勤務しているうちに、妊婦さんへのケアや指導について、自分の目指すイメージとの違いを感じていきました。病院では、クリニカルパス(※1)にのっとって、妊婦さんの入退院の時間が決められ、妊婦さん達に集団行動をしてもらう場面もあります。もちろん、対応が抜けてしまわないよう、時間が決められていることは大切です。ただ、私は、妊婦さん1人1人のタイミングをもっと大切にしたいと感じ、病院ではなく、助産院で働くことを考えました。私は、助産師経験が1年しかない状態でしたが、幸運な出会いがあり、今の助産院で働き始めました。

 

※1 クリニカルパス:医療の内容を評価・改善し、より質の高い医療を患者さんに提供することを目的として、入院から退院までの治療・検査のスケジュールを時間軸に沿い記述した計画表

 


Q5 助産師として印象に残った経験は?


1つ目は、病院と助産院の「自然分娩」の違いです。病院では、あくまでも分娩台でお産をするのに対し、助産院では、大きなベッドでご家族に見守られながらお産をします。この違いに、当初は衝撃を覚えました。病院勤務の時期はコロナ禍で、ご家族の面会がオンラインか電話だったこともあり、助産院との違いを、より大きく感じたのかもしれません。

 

2つ目は、「自然誕生」です。「自然誕生」は、赤ちゃんが産まれたいタイミングで産む、ということを表しており、今勤務している助産院でとても大切にしているお産の仕方です。近年、計画分娩や帝王切開などの医療介入を伴う出産が増えています。やむを得ない事情のある方ばかりではなく、必ずしも必要がない方でも、計画分娩や帝王切開などを希望するようになっているためだと思います。出産する側の事情でタイミングを決めるのではなく、自然に訪れる陣痛を待ち、産まれてくる赤ちゃん側のタイミングに合わせて出産することで、赤ちゃんとお母さんが、自分らしいスタートをきれると考えています。


インタビュー:プレコンセプションケアについて皆さんに伝えたいこと。~看護師から助産師へ~

Q6 近藤さんがとても必要だと感じている「プレコンセプションケア」とは


プレコンセプションケアは、妊娠・出産を見据えて、女性やカップルが、自分の生活や健康に向き合うことです。

 

これまでのお話で、赤ちゃんとお母さんが、自然なタイミングで自分らしいお産をする大切さを話してきました。そういった自分らしいお産は、何の準備もせずにできるかというと、なかなか難しいと思います。実際、助産師の友人との会話の中で、妊娠のために健康面に気を付けたり、どんなお産をしたいのか、出産前に考えイメージしている妊婦さんは、分娩の所要時間が短く、妊婦さん自身の満足感が高いという話があります。

 

このように、プレコンセプションケアは、母子共に健やかで自分らしい妊娠・出産をするための、大切な準備であると考えています。


 

Q7 近藤さんが考える、日本の「プレコンセプションケア」の課題とは?


1つ目は、まずプレコンセプションケア自体が、あまり知られていないことです。今勤務している助産院では、妊活中の女性が相談に来ることもあり、そういった方には、プレコンセプションケアについてお話していますが、まだまだ認知が低い印象です。もっと多くの方にプレコンセプションケアを知ってもらうためにも、発信活動を続けていきたいと思っています。


2つ目は、プレコンセプションケアに関連した、ヘルスリテラシー(※2)の低さです。特に日本の若者のヘルスリテラシーの低さは、世界的にも低いことがわかっています。ヘルスリテラシーが低ければ、健康や医療について正しく理解し活用することが難しいため、プレコンセプションケアを適切に行えません。今後、コンセプションケアの認知を広めていくことで、ヘルスリテラシーの重要性にも気づいてもらえればと考えています。


3つ目は、パートナーとのコミュニケーション不足です。プレコンセプションケアは、妊婦さん1人で、全て行えるものではありません。妊娠・出産に伴う妊婦の心身の変化や大変さを、パートナーにも理解してもらい、協力し合うことが大切です。そのために、まずは妊娠前から、カップルあるいは夫婦が十分なコミュニケーションをとることが望ましいです。実際、夫婦間のコミュニケーション不足が原因で、産後ケアが不十分なケースが非常に多いと感じています。妊娠前から、夫婦でコミュニケーションをとって、しっかりと関わることができていれば、女性側も辛い状況を伝えやすいのではないでしょうか。


このように、課題は多くありますが、もっと多くの方に、自分らしいお産を叶えてもらえるよう、プレコンセプションケアを広めていきたいと思います。


※2 ヘルスリテラシー:健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する能力


 

終わりに


転職支援をしていると、“ご縁とタイミング”があると実感します。


今回インタビューをさせて頂いた近藤優実さんからは、折に触れて、自分自身と対話、もしくは自分自身とコミュニケーションをとり、自分が進む道を模索されてきたのだなと感じました。インタビューの中でも出てきますが、大学4年生のとき、助産師を目指す為大学院に進学されようとしますが、その時は望み通りにはならず、看護師として働くことを決意されます。その後、看護師としてオペ看・循環器病棟での勤務を経て、再度助産師を目指され、望み通りに助産師になり、ご縁を引き寄せ、現在の勤務先に出会われています。


キャリアってなに?と、時々ご質問を頂くことがあります。


転職市場でいうキャリアとは、職歴をイメージしがちですが、私が思うキャリアは、自分が歩んできた道でもありますし、生き方そのものだと感じています。

どんな生き方をしていきたいのか、どんな人生を歩んでいきたいのか。

全部をひっくるめて、キャリアと云って良いと考えています。


だからこそ、ご自身の想いに自分で気づけば、自ずと進む道は見えてきますし、キャリアも形成されていきます。

これからの時代は、「自分がどうしたいのか?」を自分としっかり向き合って決めていく時代になるとインタビューを通して思いました。


「キャリアを真剣に考えたい」と思われる方、一度私どもにご相談下さい。自分の想いを形にしていきましょう。


インタビュー:プレコンセプションケアについて皆さんに伝えたいこと。~看護師から助産師へ~

【近藤優実さんを知りたい方はこちら】


【近藤優実さんが書かれたプレコンセプションケアを詳しく知りたい方はこちら】


【近藤優実さんのご経歴】

2017年東京医療保健大学医療保健学部看護学科卒業

2017年兵庫県立淡路医療センター

2021年東京医療保健大学助産学専攻科卒業

2021年民間病院

2023年バースハーモニー美しが丘助産院


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